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2015-10

親友の結婚

その日僕は早朝からの仕事を終え、午前中の飛行機で東京に帰るところだった。
北海道での仕事。僕の故郷。
予定よりも早めに終わり、搭乗口通過時間まで1時間弱あると逆算したのち
親友に「今から空港でお茶しよう!」とメッセージを送った。
「いいよー何時?」というシンプルな返事が返ってきて、僕はニヤリとした。

親友であるMは空港の近くの町で娘と二人で暮らしている。
若い時に結婚して、若い時に子供を産んで若い時に離婚した。
その子は来年には中学生になる。

不思議なもので、Mと連絡を取る時はピンポイントで予定が空いていたり、
電話で会話する際、お互いその時の悩みが
そのまま自分にシンクロするなんてことはしょっちゅうで。
だからその日、たまにしか北海道に帰ってこない僕が、
突然その日にお茶に誘って、たまたま時間が開いたMと会えることになっても、驚かなかった。

「結婚しようと思う」

と彼女が話し始めたとき僕はスパゲッティを頬張っていて
口の中をもぐつかせながら「おめでとう」と祝福した。
交際している人がいることは知っていたし、
それがごく最近のことだったのでそれもたっぷりと祝福して
結婚に至るまでの経緯と婚約者の人となりを聞きながら僕はスパゲッティを食べ終えた。
すると急にMの10年を思い出して、
もちろん僕の知る範囲の10年を思い出して、たまらない気持ちになった。
腹を満たしたとたんに感情がついてくるなんて
本当に現金でバカなやつだと自分にあきれながら。

赤ん坊の娘を抱いて「すぐ離婚しちゃったけど、
私はこの子と出会えたから幸せ」だと言ったこととか、
Mの身長に迫る勢いでどんどん大きくなる娘が自家中毒にかかり、
どうしたら良いのか悩んでたこととか。
叶わない恋に身を焦がしていたこととか。

同情ではない。僕はきちんと境界線を引いている。
君は君で、僕は僕。誰の人生だって裁けない。
ただそんなことを思い出して、たまらない気持になった。
うまく言葉で表せないけど、とてもたまらない気持になった。

僕はうらやましい。
結婚することがじゃなくて、人生を共に生きようと覚悟を決めた相手と出会ったことが。
そしてやっぱり、親友にそういう人が現れたことが嬉しかった。

今度北海道に帰ったときに、きちんと新しい家族を紹介してもらおう。
その日が今からとても楽しみだ。
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プロフィール

あんどう

Author:あんどう
未治療FTM・FTXと、そのパートナー、ご家族、友人などのコミュニティ【紡ぐ】のスタッフとして活動しています。
主に『紡ぐラヂオ』の制作を担当しています。

北海道出身、未治療FTMの32歳。音楽と写真を撮ることが好きです。
みなさまどうぞよろしくお願いいたします。

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